ピラニア/「Y」
きりと空から浮かび上がらせていた。
あの日の夜、勉強机の片隅に置いた小さな金魚蜂のなかで泳いでいる三尾の金魚を眺めながら、僕が心の中に思い浮かべていたのは、昼間に浅草で見た、黄金色に輝く神輿でも鉢巻を締めた男達の姿でもなく、夕方に熱帯魚店で目の当たりにしたピラニアの姿だった。僕は、帰り道で目にした、団地の壁を鮮やかなオレンジ色に照らしていた夕陽の耀きを、ピラニアの鰓から腹にかけて染め上げている朱色とだぶらせて脳裏に浮かべていた。それは僕の瞼の裏でぎらぎらと輝いて僕の神経を昂ぶらせた。僕はベッドに入ったあとも、なかなか寝付くことが出来なかった。
三社祭の帰りに立ち寄った熱帯魚店を僕がふた
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