怨念マリモ/「Y」
 
「怨念だけが残るのです。身体がなくなって、感情がなくなって、さいごに、怨念だけが残るのです」
 博士が女生徒に話しかけた。博士は疲れたような顔をしている。丁寧に撫で付けられた白髪と、プレスの行き届いた白衣姿が、独特の清潔感を醸し出している。

「怨念も、感情の一種ではないのでしょうか」
 女生徒は博士に訊ねた。
「違います。それは全く違います」
 博士ははっきりとした口調で、そう答えた。
 
 十畳分程度の広さを持つ研究室は、綺麗に整理されている。本や書類はキャビネットに収納され、机の上には電話機とパソコンしか置かれていない。また、床も入念に磨き上げられている。
 窓にはブライン
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