回遊する少女3 (セロリ)/佐野権太
 


  セロリの子たちは
  つぎつぎと生まれるの
  つかまえようとしたら、だめよ
  ちいさくなって
  手をつないで
  ひろがってゆくの



少女は
華奢(きゃしゃ)なあごを漂わせ
ゆっくりと瞳をとじる
時のとまった
静かなキッチンに
包まれてゆくように



  立つわ、きっと
  あなたの支えなしで
  ね
  そしたら
  よりかかっても
  いいのよ
  あるでしょう?
  あなたにも
  そんなとき









  あら、
  さくら色の耳をしているのね



  ねぇ、どうして
  泣いているの?

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