海辺の町の/夕凪ここあ
たけど
少し羨ましかった
すっかり日に焼けて
航海に行く日には
港まで手を振って
私の白い手は
小麦の匂い
パパとママに
短い手紙を書いて
私は海に出たい
小さな船に乗って
すっかり日に焼けて
港も見えないくらいの
海の真ん中で
水平線の向こうから覗く
お日様を見てみたい
それから
私の行ったことのない
知らない国、とか
そのためには
スカートだって
はかない、から
そんな夢を見て
また一日が始まる
遠くで波の音、潮の香り
私の町は港町で
私の家は
高台のパン屋さん
朝には
たくさんの人が来る
あいかわらず
手のひらに
染み込んだ小麦の匂い
今頃、船は
見えないくらい向こう、で
戻る 編 削 Point(17)