ラブソングは最後に聞かせて欲しい/霜天
計算外の出来事が方程式の上を埋めていく。それほどのこと。滑らかに、滑るようにして動いていく景色を、雪のよう、と思ったのは。確かに伝わっていたように思う。
手を合わせて、あるいは重ねて。次第に動けなくなっていく空のことを。雨の後の空のことを、いつまでも想い続けてしまうのは、きっと、残されてしまったからだろうね。
国道が見える。大きな街並みが見える。重心は確かにそこだった、それだけを世界と呼んでいた。左に折れる、大きなカーブに沿って海が見える、空が、続いている。海の方へ、向かってください、潜り込んだ助手席でそれだけを、やっと呟くと。右側の窓が開いて、いつの間にか空っぽになっている。アク
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