肺 茸/「Y」
。お土産」
病院からの帰りしな、看護婦が俺に渡してくれたのは、ザル一杯に盛られた「肺茸」だった。
「…… 」
帰宅した俺を、妻は無言で出迎えた。
「おいおい、お帰りなさいぐらい言ったらどうだ。手術も無事に済んだんだ。ちょっとぐらい喜べよ」
そう言いながら俺は、肺茸の盛られたザルを妻に手渡そうとした。
「キャッ」
妻は手を引っ込めて飛び上がった。
「おいおい。何なんだよ」
「だって、それ、肺から取れたんでしょう? 」
「そうだよ。摘みたてのホヤホヤだよ。美味しいんだってよ。新鮮なうちに、一緒に食べようや。な? 」
「……嫌、気持ち悪い。私、食べたくない」
妻は泣
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