ゆれて歩いている/A-29
 
ぬらっとしたみどりの椰子の
ふふとわらう看護婦のような葉もとを
もんしろちょうが飛ぶろうか
秋の晴間のかくもたかきを
もんしろちょうが飛ぶろうか

捨て子と知ったその日から
晴れてばかりの日々なので
どうせ迎えはこぬからと
ゆれて歩いておるのです

私も捨て子
この子も捨て子
捨て子どうしのお天気は
ちょうちょがいくつか飛びもする
野花にわらいかけもする

森は明るく
あれが死ぬ
里は無欲で
これが生く
ここに嘆きがあるろうか
そこに非業があるろうか

捨て子と知ったその日から
ゆれて歩いておるのです
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