夕暮れの城/折釘
陽炎
腰掛けていた
いちばん星を覗く滑り台の穴に
いつの間に産み落とされた野犬の一匹
今にも飛びかかってきそうに潜み
くらい視線をまばたきもせず
幼い精神は注がれ
幼児は壊す
どこかの少女が泣きやまぬので
幼児は積む
何処かで銃声が雲に触れたので
幼児は目をつぶって
自分が死んでしまったことを知る
突き刺した小枝が最後に
倒れてしまうまで掻きよせ
沈黙のなみだを掻きよせ
一握りの砂の落下に照り残された
幼児の背中は震えている
突き刺しては倒し
突き刺さっては倒される
いつまでもくり返される
このちいさな不安の中でこぼれるしずくは
ものも言わぬ固い唇を結ぶ
なぐさめる者もない芽生え
水銀灯に冷やされて
集めた砂をふみしめる
投げ出された両足の踵から
流れ込んだ終止符が
彼というにはあまりに幼い皮膚に包まれた
祈りすらまだ知らぬ祈りを
汗に吸い込み
重み
見届ける
暗闇と光に震える
夕暮れの城は立っている
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