Chrysalisis/マッドビースト
 
ガラス窓の夜に写った瞳が少女のようにきれいになっていることを願っては瞼を開く
二十二時の電車に乗っているのはみんな旅人
人生の意味を探す旅の途中だ

ガラスの中で半透明の自分はやはり疲れた目をしたままで夜の影に重なっている
遠くに見えるビルの赤色等
なにか素敵なものが見えるかもしれないからと目を凝らす
そびえるビルはまっ黒だ
薄暗い夜の中
夜が湧き出す原因であるかのように
私達の街の中心
私達の文明の中心
空を刺すように打ち立てられたテクノロジー

古い深緑の七人がけのシートでは
旅人達が眠る
スーツの男が夢を見ている
少女が鋭い目で握り締めた携帯の端末を見つめている


街は眠る
さなぎのように硬く見えない甲殻を閉じて
新しい時間を待つのではくて
自分が古い時間を忘れるのを待って

眠る眠る
街は静かに夜に浸っている
自分の次の姿の夢を見ている
一日の労働に
千切れかけの紫の羽を閉じて
私達も眠る
さなぎになって
明日にはまた新しい羽ででかける
旅の続きに



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