衛星クーピー/佐野権太
 
を持ってきたよ
(大好きな青を、たくさん

わずかな星あかりを集めた
銀の削り刃
ねりねりと抵抗を回せば
湿った青がほどかれてゆく
うっとりと鼻先を泳がせる少年
    

(あんしんするね、ラナ
(青い衛星になるんだ、ぼくら

やがて、儚くも
芳醇(ほうじゅん)な繭(まゆ)を完成させた少年は
やわらかい胎児となって
回転をはじめる
    

(だいじょうぶだよ、ラナ
(ラナはいつも、笑ってくれるから

回りながら
廻り続けることが
原子の、生命の、宇宙の摂理ならば
誰もが
ゆるされた空間に漂いたいという深層を
抱くものなのか

少年も、ラナも

戻る   Point(19)