幾年(いくとせ)/こしごえ
 
石仏(せきぶつ)のこけむした肌が
しゃんわりと日に照らされて
青く反射している真昼すぎ
山山は遠く波打って青白くかすんでいる
地際にひとり
うっすらと真っすぐに立つからだ
ポシェットにひそむ
小さな星が 鳴いている

こいびとよ
おまえはどこにおちただろ
見わたす限り青ざめて
風よ澄んでいくばかり
映る世界がおちたのか・・・・・・
さめざめと(吹かれて
こいびとよ
雲が眩しい
眩しく)青空から見わたしている

空で響く
銀(しろがね)色の涙を流す
後ろ姿の静けさの彼方が
青く沈んでゆく
石仏の視線が宙をつらぬいている








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