【後編】不老不死の男/橘のの
*
もはや
時の流れは緩やかです。
それはそれは
気が遠のくばかりです。
ええ
そういえばあれから
もうずっと人間を
見ていません。
けっきょく
私にしろあの薬にしろ
在ることを証明できないでいるんです。
むしろ
無いということに
近いのかもしれません。
証明してくれる者が
誰もいないのですから
そんなものが永遠の正体だったなんて
そう思うと
何年かぶりの笑みが
こぼれたりするのでした。
*
この手に残った薬を
私は
そばにいた猫に与え
眠って待つことに
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