【前編】不老不死の男/橘のの
あの
白い薬局で手に入れた
不老不死の薬は
思ったよりずっと甘くて
胸やけなんかしたりするのでした。
どうやら
それが最後の2つらしく
ちょうど「売り切れ」の札が置かれたのでした。
ふたつ買ったそのワケは
いつか愛する人に
飲ませてあげようと思ったりしたからでした。
恋人もいないのに、
思ったりしたからでした。
*
私以外の月日は流れ
時代は移り
巷では不老不死の薬が
もし存在すれば飲むかどうかの議論を
戦わせたりするのでした。
私はまだ
誰にも知られずに
薬をしまっていました。
*
ある時代の冬
私にもついに恋人と呼べる人ができたのでした。
彼女とは
雪の降る街角で
出会ったりしたのでした。
*
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