霰、夕立/A-29
 
  武士(もののふ)の矢並(やなみ)つくろふ小手(こて)の上に霰(あられ)たばしる那須(なす)の篠原(しのはら)

 言わずと知れた実朝の名歌。とはいえ、じつは私は知らなかった。もともと和歌、短歌にはほとんど興味が無く、私が知っている和歌といえばわずかに「風さそう花よりもなお我はまた」の歌ぐらいなもので、これは谷岡ヤスジが『アギャキャーマン』などでしばしば引用していたから憶えてしまったのだ。あの漫画家がもっと生きていればもっと和歌を覚えたかもしれない。
 そんな私だから好きな子規の仕事であっても、彼の短歌の業績にはとうぶん寄り付かないことに決めていた。しか
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