恩寵の梯子/杉菜 晃
 

人は
たつた一つの
幻を見るために
生れてきたやうなものだ


幻はきまつて
この地平とは切り離された
はるかかなたにある


とても手で捉へることなど
できないほど隔てられて


けれども
その不可能に
すがりついていかうとするとき
思ひがけずするすると


恩寵(おんちょう)の梯子が降りてきたりする




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