逃げろ(独白)/月音
 

 いつだって それは流行りすたりで 忘れられてしまうのだ
 多分 何年かの周期で
 誰かが 自ら 命を絶つたびに
 それこそ 今始めて それが問題になったかのように 騒ぐ

 連綿と 続いているのだ

 それこそ20年前にも あった

 教える側のものが いじめる側に立って 一緒になって
 わたしは かつて それを受けた

 「君にも責任がある」

 私は 死ぬ代わりに 怨念を込めて 見返すため
 私は 死ぬ代わりに 恨みをこめて 問題集を解く
 それが 正解かは いまだに分からない

 でも そういうやつは 多分 死なない
 悪人の方が 多分 死ににくい

 訳知り顔のカウンセラーも
 神妙な顔の教育委員会も
 怒りをあらわにするコメンテーターも
 馬鹿馬鹿しいくらいに 嘘つきだ

 間に受けて これ以上傷つく必要なんかない

 たった 一言

 全力で 逃げろ
 世界の果てまで 逃げろ
 死ぬくらいなら
 逃げろ

 逃げていい

 そんな 当たり前のこと
 わたしくらいは 言ってやる


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