不眠/田代深子
薄い光が
瞼の縁からにじみ
あまねく人々は夜をなくす
かくも永き不眠
頭骨の隙にガムテープを貼り
モジュラージャックから脊髄を
抜いて試みる
眠れない人々は言おうとするだろう
試みは
願いのありようだ が 試みるとき
願いは半ばついえているものだ と
かつて
夜はひとえに輝き
融けかけた氷片だけが枕上を過ごした
眠らぬ私に懲罰を
長いまつげにゆらぐ影 に
ともなうため毛布から
上半身を牽い た あしたには
鈍痛にあえぐとわかっていて
いまは
氷片からしたたる水が温みながら
こめかみをつたう
くったくない着信音
選択によってしか消えない音
光源からのがれ歩く正面に
透過していく自転車の錆びきった
音
そのうしろから
密やかなものがある
と
いたわるかわいた声が
きこえたようだ しかし
どうしてそれを知りえるのか
不可視のものをどこに
夜の到来
を 待たねばならないひとえに
眠り 眠りにすべてを露わし
すべてから切り離される そこで
願いが融け残るならばそれでも
それだけで
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