視界に在る言葉/朽木 裕
写真を撮りたい、と云う欲求は一体何だろうと考える。
撮りたいと思うものはいつも空。
そして原色がちりばめられながらも穏やかな色をした公園、
自分の周囲にいる愛しい人々、
かつては息をしていた建物―朽ちても尚、美しいその姿、
電柱や鉄塔など無機物の声、
無機物と有機物の組み合わせ…
兎角そんなものばかり私は撮っている。
いつ撮っても被写体はさして変わらず、
それならば何故撮りたいのだろう。
私にとって写真は視界に在る言葉だ。
徹底的にビジュアライズされた詩。
詩は毎日生まれる。
書きたいことは変わらなくても表現方法は微妙に違う。
だからなのかも知れない。写真を撮りたいと思うことは。
私は今日もファインダー越しに世界を切り取り詩を書いている。
恐らく明日も明後日もずっと。
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