桜輪廻/まほし
 
ごめんね
今まで気づかなかったよ


赤や黄色の季節の絵の具で
みずみずしく重ね塗りされた
桜の木の葉っぱの影に
ちいさなちいさな
土色の蕾


今までずっと蕾は
冬に現われるのだと勘違いしていた
秋は秋で
目まぐるしく落ちる葉っぱに惑わされて
死の影に
生が
確かに脈打っていることさえ
忘れそうになっていた


目を閉じて
青葉の向こう
海鳴りのような木漏れ日を描いて
いつからそこに蕾は現われていたのか
思いを馳せながら


麦踏みするように
落ち葉を踏む


落ち葉が
土となり
樹液となって
いつかは空いっぱいに
明るい花を満たすのを
感じながら






戻る   Point(17)