桜輪廻/まほし
ごめんね
今まで気づかなかったよ
赤や黄色の季節の絵の具で
みずみずしく重ね塗りされた
桜の木の葉っぱの影に
ちいさなちいさな
土色の蕾
今までずっと蕾は
冬に現われるのだと勘違いしていた
秋は秋で
目まぐるしく落ちる葉っぱに惑わされて
死の影に
生が
確かに脈打っていることさえ
忘れそうになっていた
目を閉じて
青葉の向こう
海鳴りのような木漏れ日を描いて
いつからそこに蕾は現われていたのか
思いを馳せながら
麦踏みするように
落ち葉を踏む
落ち葉が
土となり
樹液となって
いつかは空いっぱいに
明るい花を満たすのを
感じながら
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