満ちる、まで/たりぽん(大理 奔)
真新しいランプで
秋の波を
どこまで照らせるだろうかと
また、
鳴き砂の浜辺で
波泡のざわめく
境界線を見つめている
小さな音を立てるのは
そこに居たという証で
胸の奥に
忘れ去った
記憶の弾ける
そんな秒針の刻みだ
右手のランプよりも
不思議な色に波を照らす
はんかけの月が
満ちるまで
思い出そうか
それとも
潮が私を
消し去るほど
満ちるまで
立ち尽くして
忘れることも忘れて
この胸の
境界線で生まれる
小さな音に
満ちるものが
満ちるまで
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