停電の夜/未有花
 
ある日我が家が突然停電になった
何の前触れもなくいきなり真っ暗闇に
わあ どうしよう!
とりあえず懐中電灯をつけてその場をしのぐことに

暗闇というのはなんとなく落ち着かない
早く電気がつかないかなあと思っていると
何やらぼわあっと窓の外が明るいことに気付く

カーテンを開けて外を見てみると
まんまるいお月様が空に浮かんでいた
そうかあ そういえば今日は満月だったね
それにしても月夜ってこんなに明るかったっけ
せっかくなので懐中電灯を消して
停電が直るまで月見をすることにした

月の光に照らされた部屋はどことなくいつもと違う
たぶんこんなことがなければ月見なんてしなかったと思う
昔は電気なんてなかったから
月の光はとても貴重なものだったろう
明るさに慣れた私たちには考えられないことだ

満月にゆっくりと雲が流れて行く
一時の風流な時間
やがて停電の終わりとともに
つかの間の月見に終止符を打つ
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