さくら/右肩良久
 
 サクラサクラ僕は行きます
 風の逆巻く世界の果てを走る走る

 花弁散り敷き足首ざくり踏み込むと
 散り散り舞い上がる幻視幻聴幻臭幻覚
 しっとりうっとりなよやかにはらはら
 しかし激烈なメロディ・ラインを落花する

 皮膚よ破れよ白く薄く膜を隔て
 滾り立つ血よこれはどうにもならぬもの、そうだ
 吹き出でよ吹き出でよ吹き出でよ

 脊髄を奔騰する痛みなんという感覚
 僕は行きます

 喉に言葉はないペニスに歴史はないノートに文字はない

 君よ僕は行くのだ花盛る幹、頭蓋ぶち当てぶち当てて

 お、

 もう蹲っていられるか、こんな悲しい宇宙の閉鎖系に
 サクラよ魂の拘束を放てよ

 見つめる掌からばらばらぼろぼろ体の成形を失い
 果ては口笛だけが虚空に鳴ります響きます

 散り交い曇れ日輪の欠けらもピンクの肉片も

 墜死する僕の未来から逆流する炸裂
 何もわからぬまま泣いてしまおう

 冷たい弾力が握り返す君の手を取る道行きに
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