わたしの中のリアリティ/小松 Anne
 
その爺が傘を持っている時は
必ず雨が降るので
わたしは爺が通る
朝7:42の窓を
「天気予報」と密かに呼ぶことにしている

爺の背筋は驚くほど真直ぐで
たぶんあれは針金で出来ているね、と
7:42に一緒に外を見た男は言ったのだった

男は二度とわたしの部屋を訪れることはなく
わたしは以来一人で爺を見ている
ベージュのカーテンの隙間から、息を詰めて

世界は狭くて、たまにわたしは上手に呼吸ができない

夕闇には雨
爺は今朝も傘を持っていたのである
そしてわたしは、一人で朝を待つ
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