蜂月の粉/よつやとうじ
 
冷凍庫に眠る
蜂の亡骸は凍る
大人のわたしは
花と虚偽の
供述を並べている

あのとき
去る季節は凶暴なのよと
教えられたから
わたしは隠れて
餌をあげた

遺棄傘に貫かれた土地
見捨てられた地面で
こっそり匿った

だけど次第に
巻き付けた首輪から
するり抜けてしまうほどに痩せ
迫る季節に怯えはじめて

ついにはわたしを忘れ
いつしか手に負えなくなり
わたしは仕方なく冷凍庫に
閉じ込めた

やがて
わたしは大人になり
わたしは多くを忘れ

冷凍庫に眠る
夏の亡骸は
小さな蜂の形をして
つまんだ
指の先で
ぼそぼそと
冷たい粉になる
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