命日/霜天
 
淡いグレイの海を静かに泳ぐ
誰かの寝息をかき混ぜないように
息継ぎには特に、気を使って

暖かい雨の日に、虹の継ぎ目を待ち侘びている
もう一度の再開、名残惜しい名前を
呼ぶ声を迎えにいける、聞こえる気配を抱き締めている
使い古しの言葉は、いつも通り過ぎずに佇むから
寄り添える涙が、どこにも、沈み始めてしまう



再びの、ありがとう
届かない声を知っている
つかめない言葉を抱いている
吸い取られた自分だけを
触れそうで、触れる
帰っていける片隅の音
いつだって聞いているような

淡い、グレイの海を泳ぐ
気付いていない、去り際の人
深い意識の底のほうで、かたちにならない手のひらを振る

ありがとう
ありがとう



回送電車は、誰を迎えにいけるのか
暮れる間際の暖かさは
いつも、この手に残されるから

淡いグレイの、海を泳ぐ
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