光の道/佩慈の工人
 
 座席のゆがみに手を乗せて、背に残る強張りをじっと見張りながら止まった駅に降りていく。階段の手摺の汚れを照らす灯りには、あの真円の月は混じっていない。夜ばかりの駅に薄く削れた空をぐずぐずと舐めながら、縫えない形の服を着ていた。撫でたい花はまだ咲かない。ぼやけた影に髪の奥まで濡れていく場所から、いなくなったトカゲの通り道が、かすれた線で辿られていた。百回でもうなだれる川幅を越えて、今日までがある鳴声に押し倒されもした。光を見た夜は遠い。それでも、レールは今日も長く、空までも延びていく。
戻る   Point(3)