*夏乃夢・ゲノム<無修正版>*/知風
そういつも野にいれば
季節の移り変わりが さぞよく分かろう
などと申されるかもしれない
けれど秋は
一時の眩暈のようなもの
縷々たる乙女の絹髪の ほつれた枝毛のようなもの
わたしたちは少し
滅亡びに甘えすぎていて
永遠の寂寞を忘れがちです
生ある者は
毎日を恥ずかしく生きて
負い目を抱えたまま 死んでいかねばならない
秋に想うことは
そんなどうしようもない心の蔭りへの
一瞬の慰めだと わたしは思うのです
それはそうと
榎の樹冠のかさこその下に
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