ティッシュの箱は抱えたまま/朽木 裕
 
私の痛みが君に沁み込んでいく

涙を一粒 こぼすたび
瞼をつよく こするたび
肩を震わすたび 声に涙が混じるたび

君の車からティッシュをひったくって
泣きじゃくる

涙が出始めるとあっという間でハンカチが間に合わないんだよ

落ち着こうとするけれど
大好きな優しい声で 「話してよ」 って君が云うから

どうして泣いているのかを考えて話す
話し出すとまた涙とまらなくなるから

困る 困るんだけど

「何も云わなくていいよ 大丈夫だよ」 って
君がありったけの力で抱き締めても

やっぱり涙とまらなくなるから

ティッシュの箱は抱えたまま


頭ぐしゃぐしゃにされて
運転席を睨む

つまらないギャグで笑わせようとする君を
泣いて無視するとすねる

その頬をギュッとつまんで涙の仕返し
もうなんで泣いてたのか分からない

泣いて泣いて泣いて
分かったことは

やっぱり君が好きだということ
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