夢の中の出来事/潔
「死のう」と心に誓ってから早三年。僕はまだ生きている。理由はよく分からないが兎に角生きているらしい。
この三年間、腕に何十回もラインを刻み込んで酒をあおっては、窓ガラスに映った風が吹いただけでも崩れてしまいそうな自分の面に絶望した。よく分からないまま四人の人間と何度か唇を重ねては夢幻に浸り、邪まな情景はまるでヘドロ。僕の幻は凡てがヘドロだった。とても美しいヘドロだった。何もかもが美しく歪んでいて、僕はその美しさの中に溶け込んだ。
そして今、それらが何の美徳も有さなかったことに現実の重みを感じている。ヘドロはヘドロに過ぎなかった。子宮内掻爬に用いられたクスコー鏡から覗く世界に等しい。僕は血糊の付いたクスコー鏡に口付けしていたのだ。
夢から覚めると、甘い馨はぬるりとした鉄の混じった生臭さへと化した。僕は生きていたのだろうか。あの柔らかく絡んだ舌も小さく速い息遣いも、僕の秘境へと伸びた温かな感触も、耳に僅かに残る心地よい囁きも、何もかもが幻想に過ぎなかったように思えてならない。
あれは何だったのだろう。
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