めいげつ/河野宏子
マグマみたいに燃えタギル涙を流すことが出来た
二十歳の頃、何でも誰の前でも迷惑なほどすぐ泣けた。
好きな人はひとりだけだったし、裏切られて
責めることもできた。そしていつでも明るい朝が来た。
でもそんな日が早く過ぎれば良いと願った。
大人は泣かないでいるから、ほんとのことを知って、
たじろがないでいるから、目の奥に何かをたたえて。
タクシーの後部座席でそんなことを思い出していた。
ミラーをのぞく。目の奥が長いこと笑ってない。
誰に言われなくてもわかる。
誰も目を見ないことでわかる。
その証拠に友だちの子ども(6か月)は、
あたしが抱くと泣くのだ。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)