海についてのいくつかの小さなお話。/夕凪ここあ
1
海の方から来た少女の持つ砂時計は
浜辺の砂だから耳を澄ませば波の音がする
2
バス停で
来るのを待っていると
潮風がワンピースを揺らす
もうすぐ夏が終わる、
ということを知りたくはないから
裾についた微かな夏の匂いに
ほんの少しだけ安心して
眠る。
目覚める頃には来るはずだった。
3
{引用=空色の少女が言う
これは海の色なのよ。
呼吸するたびにあぶくが生まれて
みな海へ還ってく。
見えないくらい遠くの方で
くじらが鳴いている。
空は夕暮れて、
波打ち際で足の先からあぶくになる少女、
これは海の色なのよ。
少女の声と泡立
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