(変転する、)黒髪/こしごえ
また会いましょう)
その黒髪の薫りは
つげの櫛に波立つ海原であった
その深海にひそむつめたさのかたちに
ささえられている波が
風色(ふうしょく)の移行を生んでいた
静まったかたちで、あざやかな質量が
ふるえる花びらの水晶で屈折して
原初音階をのぼりながら、青白い肌の灰色のささやきで
燃えてゆく
すんと仰ぐ視線の先、煙(えん)
突(とつ)からゆらめく煙
あのひとは
これをのこしていくのだ
(漂う
青雲に溺れそうな目差は
存在のまえでは無力
ふねは
海を渡るのだ
あなたとわたくしは
その未来でしか交わることはない
降るだろう雨
あがりの虹へ足をかけて
にじむ風光
あぁあれは黒揚羽
あのひとは
いまも
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