子規の句 猫と犬/A-29
 
ょっとすると、この句もそういう二面性を孕むのかもしれない。秋の寒々とした夜に勝手にやって来て水だけ飲んで走り去る野良犬。しんとした寂しさがよけいに強調されもするが、気ままな野良犬の命の温もりが感じられなくもない。そしてついそんなものに共振してしまう子規であるとすればまだ救いはあるように思われる。しかし、この野良犬がじつは死神の権化であったとなれば「夜寒」の深さは一気に無限大と化してしまう。真性のオプティミズムであればこそ、木登り猫でも脊髄カリエスの死神でも分け隔てなく写し取ってしまうのだろうか。
 ああ、やっぱ猫が好きかも。

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