子規の句 猫と犬/A-29
がさゝと猫の上(のぼ)りし芭蕉(ばしょう)哉(かな) 子規 明治二十八年作。〈季〉芭蕉・秋
猫が草木によじ登った。ただそれだけの句。しかし「がさゝ」という擬声語が存分に効果を発揮し、一語で猫という生き物の在りようや芭蕉という草本(そうほん)植物の質感までも写しとっている。そう言ってよくないだろうか。根本的なオプティミズムに支えられた写生という方法論によって、明治のとある日のとある心象が一句のうちに平和裏に固定された。叙景すなわち叙情といってよさそう。
犬が来て水のむ音の夜寒(よさむ)哉 子規 同三十年作。〈季〉夜寒・秋
私は猫好きなの
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