テーマ/まれ
 
仄暗い喫茶店で握り締めた手を開くと光りが逃げてゆく
散り散りに

光りの粒たちを追って暗闇を見つめ集めてきたんだった
ひとつふたつと

硬く握りしめて

逃がさないよ と言うのだった

だけど

木の壁に背をもたせて体を緩めてしまえば
放たれてしまうのだった

心地よく保たれた室内にトランペットがテーマを謳い上げる
音の粒が空気を洗ってゆく

還りたい
気がつけばそれが足元にあった
戻る   Point(0)