ひかりの憧憬/前田ふむふむ
々に、乾いた岩の素顔に、
微量な清涼を流して、威風をはためかせた、
レコンキスタの止まらない汗を鎮める。
エル・グレコの姿態は、流れる筆を、
長けた潤いと輝きに染めて、
女の肉体を包む紺色を、誠実の印象に富ませる。
中世の意匠を編みこんだトレドの街は、
暗く縁取られて、陰鬱を、
ふかみどりに塗りこまれた広野に晒して。
敬虔な画家は何処までも、とどまり続ける。
にわかに、閃光を放つ空より、
暑い季節が眺望の由来を語り、
要塞アルカサルを、ひかりの湿り気で癒す。
屹立する油彩の壁に、封印された、ふるえる窓を、
白い句読点が踊りだす。
物語の炎のなかに、炙り出さ
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