ひかりの憧憬/前田ふむふむ
 
ひかりの意志は、古い細密画の粗野を洗い、
陰影の微動を深めて、写実を濃厚にめぐらせる。
信仰の果てしない夢を、
高貴な光彩の眩しさのうえに、
振るい落として――。
古典はイスパニアの春を謳う。

愛するものを見つめる女は、
喪する静物のような憂いを湛える。
眼差しの貴賤を、硬い歴史の波に委ねてきた女は、
懐かしい古典の死者を、暗い空に埋めて、
繋がれた生は、孤独な強い感覚にしずむ。
静かな調度は、悔悛の時に、
髑髏で飾り、異形の匂いを、隈なく方位に放ち、
女はみずのように、濡れた容姿をもやす。
背後には、茫々とした荒野の暗闇が口を開いて、
黒いひかりが、乾いた草々に
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