山間/
杉菜 晃
蒸気機関車は白い煙を吐き
山間に入つて行つた
当初は白煙もにじみ
汽笛も木霊して
ああ あの辺りを喘いで行くな
と安心させたが
程なく それもなりを潜めて
山は静まり返り
もう蒸気機関車の消息を伝へるものは
何も残つてゐない
それから年月を経て
蒸気機関車が山から出てきたとは
聴いてゐないし
今では煙のまつたく出ない
ツートンカラーの電車が
軽々と走り抜けてゐる
山から出てくるのは
回想とクマだけだ
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