薬/白雨
薬の臭気が私の鼻をつまむ
私は奇怪な妄想に胸ふくらます
青空! 空はあおい
そのもとに灰色の飛行船が飛び交う
私の脳味噌の断片
爆発した心臓の破片
鮮やかな紅の紙吹雪が
熱中症で倒れた私を歓迎する
嘲笑する私の太陽
噴水に佇む黄色い鳩
私のよき友達は、
返り血を浴びて
不気味な目で私をみている
ああ、恋人
私は太陽に嫉妬する
その思わせぶりな目つきは忘れまい
太陽の香水が
熱病の臭気に一抹の阿片を混ぜた
噴水の傍らで私を見ている
モディリアニの貴婦人は
私を馬鹿にしてるやら
私に見とれているやら
紅のハンカチで私の体を拭ってくれる少年は
よく見れば一体に黒い服を着ていた
みんな私を知っている
心の隅まで知っている
青空!
私は遂に舞台のただ中に来てしまった
そこでまた、心臓も 脳味噌も ばらばらだ
私は片端だ
私は廃人だ、
ライトー!
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