天体に関する話/朽木 裕
 
Act:01 「アロンアルファ」


「どうも、星が墜落したようだ」

声をひそめてそう云った男は、瓦の取れかかった屋根から
落ちてきた。

「君だって墜落してるじゃない」

右手に持っていたアンテナは見る影も無く、
アメンボの死体みたいにのびていた。

「それより星だよ。3つは落ちたように見えたのだが」

今しがた折ったばかりの紫陽花の上から立ち上がって
わけもなくそう云って、男は眼鏡に触れた。

彼の眼鏡。

屋根から落ちる際に彼の眼鏡は確かに宙を舞っていたと云うのに。

それは着地の際、しっかりと顔にはめられていたのだ。

僕は今、魔法のアロン
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