羽抜け鶏/杉菜 晃
羽抜け鶏は
見かけほどにはこたへてをらず
日を直に浴びられるだけ
血潮に赫いて
田舎道を闊歩する
見よ
いつもは目を皿にして
獲物を追ふ狐が
鶏冠(とさか)王の惨たらしい外貌と
血気の勇ましさに
笹薮の奥へと後しざりする
鶏冠(とさか)王が笹薮に向き直り
時をつくるものなら
狐は
ぞぞぞぞーつと
笹の葉擦れも凄まじく
後方の丘へと一直線に遁走する
パ
サ
パ
コケコッコーー
サ
パ
サ
パ
サ
パ
横長の文字は翼のつもりだが
左右不揃ひなのは
羽抜け鶏のことゆゑ致し方ない
戻る 編 削 Point(5)