羽根のない感情/ななひと
 
羽根のない感情は愛に似たかたちをして傾いたまま空間を押し広げる。
次々と貼り重ねられる湿り気のある紙片 に爪先をおろせば、
あるいはめくれ上がる雪原 手を広げて落ちていく 空間の柔らかな深さ!
口移しのようにして温められる言葉が ぽたり
毒のようにめぐるよ 野火のようにささくれ広がり
眼底が燃える ひらいてこぼれ落ちる …受け止める頬はただに流れる
たとえようのない曲面に立つさざなみは 櫛のようなかたちをした境界に引き取られる ―絶望は背骨から生え伸びる手だ… 防風林のように肩を寄せて揺れるよ。やって来る。やって来る。帽子を抱えた足音が。包囲し食い潰すために。
指を伸ばせ 爪を乾かす
[次のページ]
戻る   Point(2)