凶夢/三州生桑
い
いや、しかし・・・
一年ほど前
ネット上で
小学生の男の子に
何かアドバイスをしたやうな記憶がある
何の悩みだったか
どういふ助言をしたか
もう忘れてしまったけれど
「信じられない!」
女の子は絶叫する
「○○君に何言ったの!」
やはり、名前が聞き取れない
私は急いで車に乗り込む
本など、もうどうでもよかった
いつの間にか、女の子がドアの外に立ってゐる
「○○君に何言ったの! 絶対許さない!」
怒りにゆがむその顏の、あまりの醜さに総毛立った
私は車を急発進させる
付き合ひ始めたばかりの恋人のところへ車を走らせた
「バックシートにあの女の子が座ってたら、怪談になるな・・・」
そんなことを思ひながら、ルームミラーで後ろを確認する
誰も乗ってゐるわけがない
私は苦笑する
信号が赤になり停車すると、トランクの中から声がした
「H君に何言ったのよ!」
その名前には聞き覚えがあった
そして私は全てを了解し、声を上げて泣き出した
http://www.h4.dion.ne.jp/〜utabook/
戻る 編 削 Point(3)