枯野にて遠出の猫と遇ひにけり/杉菜 晃
いつもの散歩のコースを延ばして
枯野に入つていくと
遠出の猫に出合つた
こちらも私と同じく
猫族を逃れてきてゐるのか
それとも人界を逃れてなのか
しばらく様子を見ることにする
いくら呼んでも寄つて来ないあたりは
人間嫌ひと見えなくもないが
それなら私から逸れて行けばいいものを
ある間隔を保つたまま
平行に歩みを進めてくるのは
どういふ料簡なのか
この猫と同じく
人界を避けてきた人間であつてみれば
まあ少しはいいか
そんなつもりかもしれない
全否定すると
生きていけないことを
猫なりに知つてゐるらしいのだ
お互ひ関はらないやうに
逍遥をつづけていくことにする
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