雨の夜のガスパール/クリ
右手と左手のための協奏曲 より
●雨の精
一度書いては捨てられた詩のように
誰にも知られることはないけれど それでも
人の心に光と影を投げる一瞬があります
ちょうど水たまりを見たときに
雨が降ったんだな と初めて気づくように
「さびしい」とさえ言えなくなってしまった
深く傷ついた涙の痕が見えますか?
「あいたい」とさえ伝えられないその人の
言葉にならない言葉が聞こえますか?
雨の精が太陽と太陽の間に書いた詩を
読むことのできる人は 幸せです
君は誰のための祈りを捧げて
眠りに就きますか?
君が寝返りをうつ頃
世界中がすべて眠る一瞬
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