唄声 花の枝 岬/杉菜 晃
唄声
曙光が
窓ガラスを割つて
侵入した
籠の鳥が
砕け散つたガラスを
呑込む
ガラスは
小鳥の胃の中で
金平糖になつて溶けていき
それからといふもの
小鳥は
宝石をばらまいて
啼きつぱなし
唄声は甘く
虹色
時に夕焼けの色
夜は
星のきらめき
花の枝
夕景の中
もの思ひに沈んで
俯き歩いて来ると
花の枝が
通せん坊した
朝出掛けるときは
なかつた
―花の枝―
それが夕方
出現してゐる
天使の腕?
岬
奇岩の鮫の牙が
見るからに鋭いので
恐れをなした波が
慌てて退いていく
次も
また次の波も
退いていく
たまに大きくぶつかつて
哀れ 気泡と化してゐる
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