愛と夜の私達/白雨
 
 詩が何処へ誘うというのか、
 行きつく処といえば、せいぜい
 薔薇の砂か 酒瓶の底だろう

 私達はいま この安宿で
 たしかに褥のうえに居る
 そうして眠る、嘘つきながら
 
 夜が私達を誘うのは、
 雨の巷から匿まわれた
 (死の幻想から守られた)
 静かな演劇にちがいない

 くだらない夢を見るのなら
 (時計の崩れゆくのに不安を捧げるのなら)
 夜を愛するよりまえに、
 女を愛しているがいい

 愛は水晶でもなくて
 つまり死にさえなれはしない

 だが暗がりで、愛は掴めぬ
 (高級な部屋でも駄目だ・・・)

 それはそも、掴めない
 それゆえに心の中で 指先で、
 
 私はこっそり、水晶玉を揺らしている。
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