思い出の街には犬が笑う/プル式
遠くに見える軒先の明かりは
線香花火の様に見えました
それは小さく 朱(あか)く
瞬きをする度に滲(にじ)んで
まるで線香花火の様でした
どこかで歌う声は囁(ささや)きながら
私の体に染み込みました
それは儚(はかな)く それは拙(つたな)く
呼吸をする度に染み込んで
まるで夕暮れの土の匂いの様でした
暗くなっていく空に浮かんだ星は
もう何処にも行けませんでした
それは静かに 微かに
目を開こうとする度に幻となり
まるで手招いている様でした
私にはもう何も見えません
あなたの想いも
あなたの顔も
どこかで歌う声は囁きます
人生は小舟みたいなものだと
優しい土の匂いが包みます
私は何処に行くのでしょう
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