言葉について/ブライアン
地上23階のビルの入り口には、受付嬢が2人いる。大理石の床にはいつも、雨よけシートが敷かれている。エレベーターホールに向かう途中、受付嬢と挨拶を交わす。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
低層階用のエレベーターホール。幾人か見知った顔が混じる。極力小さな声で、自信のないあいまいな声で、挨拶が交わされる。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
言葉は、人というツールを生かして、世界にはびこった。人は言葉を包括していると信じ込みすぎた。言葉と意味(自己の内在性)が散り散りになると、人は絶えず言葉を罵倒した。
「言葉はくそったれだ」と。
包括していたはずの言葉
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