「余命」/広川 孝治
 
夜更けの澄んだ冷たい空気が
少し開いた窓から流れ込む
道路を走る車の音や
電車のレールを叩く音が
虫の静かな声と共に
部屋に流れる孤独の空気を際立たせる

鳴らない電話
新着メールの知らせも無い

世界に取り残された自分が
ひっそりと生息している

空には月が孤独に光る
白い光を見つめながら
自分の命をあとどれくらい残すのか
考えている自分がいる

外は秋
夏は過ぎた

僕ももはや盛りは過ぎた

あとどれくらい生きるのだろう

月は静かに照らしている
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